この間図書館に行ったら『浮世絵に見る江戸の食卓』という本に出会った。
表紙を一瞥するとお姉さんが何やらまるい物体を皿に盛っているところだったので、家に帰ってじっくりその皿の中身を見てやろうじゃないかと思ってその本を貸出し機に通した。
江戸の人達がうなぎをムシャァしているような浮世絵あって眺めていて楽しいのだが、一緒にその料理を再現した写真も載っていて食欲がそそられる。よくよく見るとレシピも載っている。
これは作るしか!
というわけで、今日は寝坊せずに朝飯を作ってみた。その名も「玉子とじどんぶり」である。醤油と塩を加えて煮立てた出汁に溶き卵をぶっこむだけの超簡単でシンプルなものなのだが、江戸時代の食卓なのだからと余計な手を加えずに作ってみることにした。
ほんとは個人的に砂糖を加えて薄甘いふわふわ卵にしたかったがグッとこらえた。
ちなみにこの「玉子どんぶり」は歌川広重が『甲州日記』という本の中で勝沼という所を歩いた際に茶屋で食べたものらしい。
普段日記で料理をあまり褒めなかったという広重さんなのだが、この玉子どんぶりに関しては「めし安し」と書いたそうな。
いや、値段についてじゃん…。
とうっすら思ったのは置いておこう。(当時卵はゆで卵で1つ400円とかなり高価だったらしいので、味もさることながら安さもイイネ!ということだったのかもしれない。)
さて、私が作った玉子どんぶりをもぐもぐやっていると母がやってきて一口食べ、「砂糖入れたほうが良かったんじゃない?」と言って去っていった。
うん……でも…江戸だから…。
※林綾野『浮世絵に見る江戸の食卓』(美術出版社、2014年)
今日は台風一過で暖かくなったけども、それでも段々と秋は深まってきた気がする。
秋が好きじゃ〜ってな事は前に綴った気がするのでネタが被らないように、今日は別の話題にしよう。
唐突だが最近食欲が増してきているような気がする。
きっと秋だからだね…食欲の秋って言うもんね…。
(…あれれ、あんまり離れてないぞ。)
食欲と言っても私の場合あんまり量は摂れない体質で、「腹八分目で幸せ」というポリシー(?)なので食欲が増すという言い方は語弊があるやもしれない。
もうちょっと厳密に「美味しいもの食べたい欲」とでも言おうか。
普段でも「何かしら美味しいものが食べたいなあ。」と思うことはままあるのだけど、最近はその頻度が多くなっていたように思う。
先日バイト帰りの電車の中でその欲望は軽くピークに達し、「今度の火曜日あたりにでも絶対食べてやるぞぅ!」と心の中で独り決意表明をしていたのだった。
そして今日がその決行日だったわけで、台風も過ぎたことだしいそいそと前から気になっていた喫茶店に向かった。
そこは和風なテイストで、ドリンク以外にも和食をいくつか提供しているという、和食好きの私にとって尊んで然るべきお店である。
一人で入るのはいかなる時も少し緊張してしまうのだが、なんとか「豚みぞれのゆず胡椒うどん」とやらを注文してはふはふと食べた。
美味しいものって大体値段もお高めになってしまうのでそう何度も何度も出来ないけれど、月に一度くらいは自分にご褒美のつもりで少しだけ贅沢をしてみるのも良きことかなとしみじみした。
バイトやら何やらで知らず知らず気を張ったままになっている自分の背中をポンと叩いて「そろそろちょっとくつろぎたまへよ。」と声をかけるようなつもりで、ささやかな幸福をプレゼントする日をつくりたい。
先週、東京国立近代美術館で開かれている「菱田春草展」を観に行ってきた。
黒い猫がこちらをじっと見ている、あのポスターのヤツである。
生誕140年記念大回顧展というだけあって作品数もなかなかに多く、春草さんてこんなにたくさん描いてたのねーと驚いた。ポスターの『黒き猫』くらいしか知らなかったのだ。
無知ですみません春草さん、ぺこり。
菱田春草(1874〜1911)は横山大観などと共に近代日本で活躍した日本画家で、従来の日本画の線で囲うのと違って境界を曖昧にぼかして描く新しい技法を試みたりした人物である。(多分)
この技法は当時「朦朧体」と揶揄されたらしいけど…猫のふわふわとした毛並みの質感なんかがとても良く表現されていた。全然違和感なくむしろ良いように感じたけども、現代人の感覚だからなのだろうと思うとなんだか不思議な気持ち。
『黒き猫』以外にも猫作品はいくつかあって、個人的にはそっちの猫の方が好みかもしれない。
それから『黒き猫』は5日間で描き上げたとキャプションにあってこれまたびっくり。5日間クオリティで国宝指定されちゃう春草さんて一体…ってかんじだが、案外ええいっと一気に描いた時の方が上手くいっちゃったりするのかもしれないとも思う。
まぁ初めからそういう火事場の馬鹿力的なものを頼っちゃうと痛い目を見たりするけどもね…〆切…嗚呼。
展覧会を観たりするのは立ちっぱなしなので疲れてしまうこともままあるのだが、自分の知らない時代のものが目の前にあることってなんだか不思議で面白い。
今回も日本画をこんなに一気に観たことがなかったし、有意義な時間を過ごせた気がする。